買い物をしていて「どれにしようか迷う」ことに、消費者は疲れ始めている。仕事は多忙で時間が少ないのに、どこへ行っても商品はあふれ、スマートフォンで情報も過剰に入る。
「消費者は多様化しており、品ぞろえは多いほどいい」というのは遠い過去の常識。顧客が本当に欲するものを作って、おすすめができれば、商品はずっと少なくていいはずだ。
そんな時代の中、注目を集める達人たちを紹介する。
日経ビジネス2017年7月31日号より、消費者多様化の終焉について考察する。
記事サマリ
<達人に学ぶ迷わせない売り方>
「私の持っている服を全部覚えてくれているんですよ。」
人気古着店「サントニブンノイチ」の店長むゆあは若い女性から絶大な信頼を集めている。客のファッションの好みを巧みにすくい取り、一人ひとりに合った着こなしを提案してくれる存在だからだ。「このスカートなら、前に買ったあのシャツと合わせられそう」「この服は前回と雰囲気かぶる。」などの会話が店内では繰り広げられている。「服をおすすめしてもらうというより、どれかいいか迷ったとき、一緒に考えてくれる存在」という常連客の声に、信頼されるための本質が秘められている。
「一万円渡すから、選んでくれ」
いわた書店の店主、岩田徹は顧客から送られてきた「カルテ」に目をやりながら、一人ひとりにあった本1万円分の本を選ぶ「1万円選書」の作業を進めていた。カルテに並ぶのは年齢や職業、家族構成のほか、「これまでに読んだ中で印象に残る20冊」「人生でうれしかったこと・悲しかったこと」などの質問の数々。岩田の選書は絶対ではない。上から答えを押し付けるわけではなく、あくまで注文者と同じ目線で心を通わすことに徹している。
両者の共通点は、お客の求めているものをつかみ、押し付けることなく、自然に提案する能力だ。それは従来型の消費に対するアンチテーゼ。芸能時やアイドルの真似をする「カリスマ依存」の消費は、もう過去のものだ。
考察
「選ぶ楽しみ」が、いつしか「選ぶストレス」に。どのスマホがいいのか、そのレストランがおいしいのか、皆せっせとネットの口コミを調べ頭を悩ませている。昔に比べ選ぶ時間が増えているのは間違いない。そこには一定の楽しみがあるだろうが、度が過ぎると疲弊する。
情報過多の中、まとめサイト(キュレーションメディア)が人気となったが、そのキュレーションメディアも乱立し、どのメディアを見るのかという選択も必要になってきた。
テクノロジーが進化し、情報が容易に手に入るようになった結果、サントニブンノイチやいわた書店のような「達人」のニーズが高まっている。つまりテクノロジーではなくアナログな人間の良さが再認識されている。しかしこれもAIによってある程度は置き換わっていくのだろう。
ちなみに私も「ビジネス署のコンシェルジュ」サービスを提供している。一人ひとりの課題をヒアリングし、私がこれまでに読んだ約1,000冊の中からその人にあった本をおすすめする。ワンコインで自分に合った本が見つかるという事にどれだけの価値を感じてくれるか不安ではあったが、これまで依頼してくださった方全員が満足してくださっている。
このような消費者のニーズにどう応えていくべきか、そして人とテクノロジーをどう活用するか、企業そして一個人としても考えていく必要があるだろう。
LEAVE A REPLY