
今回は書籍「28の攻略法でよくわかる ネット&リアルのO2Oマーケティング」を参考に、O2Oマーケティングの概要と事例をご紹介したいと思います。
O2Oと双方向のO2O
インターネット上からリアル店舗等への送客を主な目的とした施策、例えばネット上でクーポンを配布し、実店舗で使ってもらうような施策のことを Online to Offline(O2O)と呼びますが、本書では「Online to Offline」と「Offline to Online」の両方(双方向のO2O)について解説しています。
ちなみにアメリカではネット販売・リアル店舗を始め、マスメディアやカタログ販売などあらゆる販売チャネルをリンクさせる考え方となる「オムニチャネル・マーケティング」「オムニチャネル・リテイリング」といった呼び方が使われています。
O2Oが注目されている理由
書籍内ではO2Oが注目されている5つの理由が述べられています。
1.ネットで見て、そのままネットで買う人は少数派の約2割
2.ネットとリアルの併用客は、平均購入金額が高い
3.顧客は既にネットとリアルの垣根をラクラク越えている
4.O2Oの市場の巨大さの注目度
5.ネットとリアル併客の事業者はネット専業者の2.6倍
最終的にはネットで購入するとしても、そのプロセスにおいてリアル店舗がからむパターンも多いということですね。特に高価な商品や、まだ一般的に馴染みのない新しい商品についてはじっくり現物を見ながら選ぶケースが多いのでしょう。
また、O2Oの国内市場は野村総合研究所の試算によると2012年段階で約30兆円とのことです。
Online to Offline の事例
無印良品の「MUJI passport」は、O2O施策における成功事例の一つとして挙げられます。
買い物や店舗へのチェックイン、商品レビューの記入でMUJIマイルが貯まり、マイル数に応じて買い物で使えるショッピングポイントがもらえるという仕組み。
アプリ上で商品を検索することもできネットストアでそのまま買うこともできますが、近隣のどの店舗で買えるかも教えてくれるので、実物を見に行ってから買うことも可能です。
その場で買わない場合はお気に入りに登録しておけばメモ代わりになりますし、値下げした場合にお知らせしてくれるという機能も備わっています。
個人的に感心したポイントは、アプリをダウンロードしたら会員登録不要ですぐ使えるという点。
面倒な手続きが省略できるのでユーザーにとっては大変ありがたいですね。
ただ顧客の属性はマーケティングに使えるので、サービス提供側の立場としてはできれば取得しておきたいもの。そこでMUJI passportでは、誕生日を登録することで誕生月にショッピングポイントを付与するというインセンティブを用意しています。
様々なマーケティング上の工夫が垣間見れる MUJI passport はO2Oのみならず、CRM・ゲーミフィケーション・クロスセルの秀逸な事例とも言えます。
無印良品の売上比率はネット7%、実店舗93%とその差は大きく開いていますが、客単価はネットが約1万円に対して実店舗は2,000円である点や、売上だけでは測れない相乗効果があるという意味では、今後もネットと実店舗間の送客は間違いなく重要となるでしょう。
来店チェックインとその種類
Online to Offline 施策でよく使われているのが「来店チェックイン」です。
MUJI passport の来店チェックインはGPSを利用していますが、精度の問題で実際には来店していないくてもチェックインできてしまうという問題があります。
例えば大阪駅のホームにいた時には、周辺にある3店舗にチェックイン可能でした。
このようなGPSの精度問題の解決策として挙げられるのが下記の仕組みです。
紙クーポン発券による来店チェックイン
ヤフーとソフトバンクテレコムによる「ウルトラ集客」は、Yahoo!Japan上に広告を出稿し、店頭で使える特典を配布することで店舗への誘導を促進するサービスです。
スマホ上で特典の引き換え券を入手し、店舗に設置されている端末で紙クーポンを発券するという仕組みなので、確実に来店したということがわかります。
Wi-Fi・Bluetooth使用した来店チェックイン
PoiCa Sensor はスマートフォンを所持している人の来店を検知する機能をモバイルアプリに提供するBaaS (Backend as a Service)です。
スマートフォンがスリープ状態であったり、アプリが起動していなくても来店履歴を蓄積でき、プッシュ通知を送ることも可能です。
つまりユーザーはわざわざアプリを起動してチェックイン処理をしなくても、来店するだけで自動でポイントをためることができるのです。
ただし、Wi-Fi、Bluetooth技術を使っているため、これらの機能がスマートフォン側でオンになっている必要があります。
音波装置を使った来店チェックイン
NTTドコモが提供する「ショッぷらっと」は、専用の音波装置が設置された店舗内でユーザーがアプリを起動すると、音波を検出して来店チェックインやポイント付与ができるというサービスです。
店内の特定箇所を回遊させるスタンプラリー形式の施策が打てる、性別や年代、時間帯や曜日によるポイントの出し分けができる、アプリがポイントカード代わりになるなどの特徴を持っています。
このように来店チェックインを実現する様々な技術があるので、自社のサービスはどのような手法が合っているのかというのをよく見定めてから導入する必要があるでしょう。
Offline to Online の事例
OOH(屋外広告・交通広告)とネットの連動例として挙げられているのが下着メーカーWonderbraのキャンペーンです。
ファッションモデルの紙ポスターにスマホカメラをかざすと、スマホの画面上でモデルが下着姿になるという仕掛けで話題になりました。
また、ダンキンドーナツではFacebookで「HAPPY NEW YEAR」に関する投稿をしてもらうコンテストを開催し、優勝者をタイムズスクエアのビルボードに展開するという施策を打っています。
Offlineのメリットをうまく活用しながらOnlineで話題を拡散させた成功事例と言えるでしょう。
O2Oを成功させるためのポイント
本書では下記の2つがO2O成功のためのポイントだと述べられています。
1.ネットとリアルの融合戦略の採用により、業績と顧客満足度を飛躍的に倍増する。というような具体的で明確な経営方針の決定
2.ネット部門とリアル部門の双方を、必ず同一の役員が掌握するというような、思い切った新しい社内体制・組織体制の整備
現場の戦術レベルではなく、経営陣も巻き込んで経営戦略レベルで取り組まないといけないということですね。
体制については部門や責任者が分かれていると、それぞれが別のKPIを追う形になり「ネット部門 VS リアル部門」で予算の奪い合いや売上争奪戦になってしまいかねません。
いきなり上記2つを満たすことは難しいかもしれませんが、理想形として意識しておいてもいいかもしれません。
今回ご紹介した本は、すでにバリバリとO2Oマーケティングを実施している方や、ネットで十分な情報収集をしている人には物足りないかもしれませんが、入門書としてはおすすめだと思います。ご興味のある方はぜひご一読ください。
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